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第402話 予感 10-4

「……お前は一体なにしに来た」  昔話をわざわざしに来たわけではないだろう。あの時のことを蒸し返したいわけでもないはずだ。  一年の半ば頃、夏休みが終わってしばらく過ぎたくらいに、なぜか峰岸だけが内々に呼び出された。Rabbitに出入りしているのを見られたらしいと言っていたが、一緒にいたはずの俺に声がかかることもお咎めもなく、事実を認めたという理由で峰岸も厳重注意で済まされた。でもなにかをこいつが全部飲み込んだと思う。  少しずつ俺を避けだした峰岸は、一緒にいるとよくないことが起きそうだからと、笑ってはぐらかした。それをいつもの気まぐれだと思って、俺はこいつを放っておいてしまったんだ。俺の知らないところでなにかが起きているのかもしれない、そう思った時にはもう二人のあいだは随分と離れてしまっていた。 「峰岸」 「……なぁ、知ってるか」  俺の言葉を遮るように言葉を投げた峰岸は、こちらを見てにやりと笑う。この男はこうやって深いところに俺に立ち入らせない。面倒ごとはすべて飲み込んでしまう。 「あの日センセ、お前に会いに行く前に知らねぇ男と会ってた。金髪でえらく顔の整った綺麗な男。ほんとに好きな奴がいるからって謝ってたっけ」 「なんで」  知っているのかと聞きかけて、その言葉は飲み込んだ。あの日この場所であの人がくれた想いの裏側で起きたことなど、今更知っても仕方がない気がした。  月島渉――そういえばあれ以来、姿を存在を見せない。あの男がずっと彼を追いかけていたのは知っている。でも俺はそれをなかったことのように、頭の片隅からさえも消した。  あの人の、佐樹さんの想いだけを抱いていないと、余計なことで気持ちが揺れて彼を傷つけることになる。だからあの日のことを知っている峰岸の気持ちなど、いまの俺は知らなくていいんだ。

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