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第407話 予感 11-4
「……藤堂」
「なんですか?」
「ん、好きだ」
「俺も佐樹さんが、好きです」
たった二文字に込められた彼の精一杯が、たまらなく愛おしい。単純だけど、それだけで幸せだと感じる。
「佐樹さん、可愛いね」
「からかうなよ」
「本音です。そういえば明日からしばらく会えませんね」
「ん、ああそうだな。でも十日くらいだけだぞ」
たかが十日程度でも、準備室にも行けず週末さえも会いに行けないのではかなりきつい。俺にとっては彼に会うことが一番の楽しみであり、癒やしでもある。
「お昼はどうしますか?」
「うーん、テスト期間は職員室にいることが多いから、やめといたほうがいいかな」
「そうですか。じゃあ明日のご飯もやめておきますか?」
「んー、そうだな。準備室は入れないから、受け取るタイミングも難しいしな」
「それじゃあ、仕方ないですね」
ここでごねて我がままを言っても仕方がない。ちゃんと線引きしてあげなければ困るのは彼だ。いまでさえどこか声が不安げだ。
「正直、少し寂しいけどな」
「え?」
「な、なんでもない」
ぽつりと呟かれたあまりにも可愛い独り言に、一瞬だけ心臓が大きく脈打った。急に飛び出す彼の本音には時折大いに驚かされる。でも同じように想ってくれることがなにより嬉しくもあった。
「落ち着いたらまたどこか出かけましょうね」
「そうだな」
いまは創立祭で生徒会に係りきりだけど、それももう少しで終わり、テストが終わればまたしばらく忙しさも薄れる。ゆっくり二人でいられる時間も多分きっと少しは増えるだろう。
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