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第408話 予感 11-5
「あ、すみません」
「どうした?」
ふいにリビングから聞こえてきた電話の呼び出し音。タイミングの悪いそれに内心舌打ちしながら、なかなか切れない音にため息をついてしまった。
そのまま留守電に変わるまで待っても構わなかったが、平日このくらいの時間に決まってかかってくる電話がある。高校に入ってからほとんど遊び歩かなくなった俺が、最近になって週末になると家に帰らないことに気づいた母親だ。普段はまるでこちらのことなど目に入っていないような素振りなくせに、なぜか急に俺の周りに干渉してくることがある。
「ちょっと電話が……あとでまた連絡します」
変に勘ぐられて彼に迷惑がかかるのは困る。なるべくバレないよう細心の注意は払っているが、面倒に巻き込みたくない。
「そうか、悪かった。またな」
「いえ、こちらこそすみません」
名残惜しさを感じつつ、携帯電話の通話をオフにしたと同時に受話器を取れば、丁度アナウンスに切り替わる寸前だった。
「はい、藤堂です」
「ああ、よかった。優哉くんだね」
受話器から聞こえてきた声は自分の予想とは違った。親しげに自分の名前を呼ぶ声その声を訝しく思い聞いていれば、黙っている俺に気づいたのか。突然謝りながら大きな声で笑いだした。
「すまんすまん。最後に会ったのは随分前だから覚えてないだろうな」
「はぁ、すみません」
名前も名乗らず覚えているもなにもない。けれどこの自分主義で上から物を言う雰囲気には覚えがある。間違いなく父方の誰かだろう。
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