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第410話 波紋 1-1

 いつも当たり前にあることがないと、途端に不安になる。そしてそれがいつまでも気になってしまい、落ち着かない自分にまた嫌悪してしまう。  初めて電話をしたあの晩。また連絡しますと言った藤堂から連絡はなかった。もしかしたらなにか急用の電話だったのかもしれない、そう思うものの。あれから三日経ち、藤堂から直接なんの連絡もないことが不安でたまらなかった。  一日過ぎた頃、毎日メールをくれていた藤堂からなにも連絡がないことに気づき、彼の教室へ行ってみた。けれどそこに藤堂はいなくて、三島がすなまそうな顔をして出迎えてくれた。休み時間になるとすぐにどこかへ行ってしまうのだという。  三島自身もまったく事情を聞いていないらしく、ただただ、ごめんと謝られるばかりで、さらに不安が募った。  もちろん以前の二の舞ですれ違うのは嫌だったから、さすがの僕もなにかあったのかと藤堂にメールを打った。けれどその返事すらいまだない。このままずっと音信不通になったらと思うと、情けない話だが気がおかしくなりそうだ。 「……か、おいっ、西岡?」 「え?」  突然、肩を揺さぶられて大げさなほど身体が跳ね上がった。慌てて声がしたほうへ振り返れば、同じように驚いた表情で飯田が僕を見下ろしていた。一瞬なにが起きたのかわからず周りを見渡すと、そこはどこか慌ただしさを感じさせる職員室だった。どうやら僕は自席で、またぼんやりと考え込んでしまっていたようだ。

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