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第411話 波紋 1-2

「大丈夫か? どっか調子悪いなら言えよ」 「悪い、ちょっと考えごとしてた」 「ならいいけど」 「なに?」  肩をすくめて息をつく飯田に苦笑いを浮かべ、はぐらかすよう僕は問い返した。 「あ、ああ。そうそう、午後の懇談会で使う資料は揃ってんだけど。出席者名簿ないんだけど」 「ん? それまだ来てないのか」  今日は創立祭当日。  生徒たちも参加する午前の催し物が終わったあと、昼食を挟み保護者や学校関係者たちと懇談会がある。それは午前中参加した人たち全員が参加するものではなく、希望する一部の保護者と関係者のみだ。なのでその事前チェックのために、資料と創立祭名簿が必要だった。 「おかしいな。生徒会のほうで用意してるはずなんだけど、八時までには持ってくるって」  ふと机上の時計を確認すれば、針は八時半をさそうとしているところだった。 「それは確かにおかしいな」  常日頃、仕事に関してはきっちりしている峰岸率いる生徒会が、こういったことで時間に遅れるのは珍しい。首を傾げる飯田につられ僕もまた首を捻っていると、勢いよく近くの戸が引かれ聞き馴染みのある声が響いた。 「しっつれいしまーすっ」  声と共に駆け寄ってくる足音を振り返ると、息を切らせた野上が分厚い封筒の束を僕へ差し出しへらりと笑った。 「ごめんねニッシー。ちょぉ遅刻でギリギリアウト」 「……野上、日本語がおかしいぞ」 「あはは、なんかもう力尽きた」  差し出された封筒を受け取れば、野上は床へ手をついてしゃがみ込んだ。

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