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第415話 波紋 2-2

 近づいてみると眠っているのか、腹の上で組まれた手が規則正しい寝息と共に上下している。 「まいったな」  どこか疲れたような雰囲気がにじむその姿に、起こすのがあまりにも忍びない気分になった。野上のあの憔悴っぷりを見たあとでは、その対応に追われていただろう峰岸の疲弊も容易に想像がついてしまう。  そっと傍に寄りその場にしゃがみ込むと、僕はいまだ寝ている峰岸の顔を覗き込んだ。 「藤堂もそうだけど、寝てるときはちゃんと歳相応に見えるんだな」  いつもは大人びていてこちらが負けてしまいそうなほどだけれど、眠っている時は、眠っている時だけは大きな鎧を脱いだみたいに無防備で、その姿を見ていると安心できてとても好きだった。  たまに眉間にしわを寄せて寝ている藤堂の頭を撫でてやると、ふっと肩の力が抜けたみたいにそれが消える。それだけで不思議と幸せな気分にもなれた。 「……」  無意識に自分の手を見つめていたことに気がつき、思わず大きなため息がもれた。その手が覚えているぬくもりや感触が消えてしまうことを、いまもまだ心のどこかで恐れている自分に気づいてしまう。 「どしたセンセ」 「あっ」  ふいに伸びてきた手が僕の手のひらをぎゅっと強く握った。予想外の出来事に、思わず上擦った声を上げてしまった。顔を持ち上げれば、ゆるりと片頬をあげて笑う峰岸の視線とぶつかる。

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