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第421話 波紋 3-3

「わかりました。もう時間がないので戻ってきてくださいね」 「わかった」  少しため息の混じった声は、再び小さな足音を響かせ遠ざかっていく。 「……」 「泣くなよ、あんたに泣かれると弱いんだ」 「お前が、あんなことさえしなければ」  藤堂があんなに怒ったりしなかった。いや、これは言い訳だ。これは自分の意志の弱さが招いた結果だ。けれどそうわかっていても悔しくて、自分自身が嫌になりそうで、そう言わなければ胸の内に溜まった感情の行き場がなかった。 「けど、あいつはなにも言わなかった。見てるだけだった」 「……でもっ」  はっきりと突きつけられる現実に、押しつぶされそうなくらいひどく胸が痛くなった。  なにも言ってくれなかったことが悲しくて、いつまで経っても一人で抱え込んで、僕に頼ろうとはしてくれない藤堂の頑なさが、本当は不安で仕方がなかった。でも多分きっと、あの場所で立ちすくんでいた藤堂の中では、色んな葛藤があったんじゃないかと思う。峰岸に対する怒りと、僕に対する想いとが入り混じっていたんじゃないだろうか。 「駄目なんだ、お前がいくら優しくても、たとえ僕を愛してくれたとしても……お前じゃ駄目なんだ」  いまは――僕にとって藤堂がすべてだから、ほかの誰かでは代わりにならない。

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