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第425話 波紋 4-3

 鳥羽とは一年の時に同じクラスになったことがある。大人しそうな見かけを裏切るその性格は、普通に接しているとあまり出くわすことがないが、なぜか俺はその頃からたびたび遭遇することがあった。 「峰岸になにか言われたか」  誰かの下につくようなタイプには到底思えない鳥羽が、峰岸にだけ従うのも以前からだ。 「見て来いとは言われましたけど」 「ふぅん、あんなのがいいのか……痛っ」  なんとなしに呟いたのと同時か、傷口を思いきりピンセットでえぐられた。 「残念ながらいくら尊敬に値する会長でも、パートナーにはごめんですわ」 「へぇ、周りもみんなそう噂してたけど、違うのか」  明らかに迷惑そうな表情でため息をつく鳥羽の様子には嘘はない。  見た目も派手で、目立つ二人だからなおのことこんな噂が立ったのだろう。 「他人の噂なんて当てにならないものよ。私は一緒にいて癒やしを与えてくださるような方が好きなんですもの」 「確かにそれは真逆だな」  峰岸と鳥羽は性格的によく似ている。切磋琢磨して互いを高めあう相手にはなるだろうが、どう見てもそこに癒やしという言葉は当てはまらない。 「会長と私は似ているから、一緒に行動するのが楽なだけですわ。仕事上のボスにはしたくても、プライベートまで一緒なんて疲れるだけ」 「そんなものか」  どんなにその場所が居心地よくても、本当に求めているものは違う。それはなんとなくわかる気はした。自分もまた鳥羽と同じだからだ。

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