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第428話 波紋 4-6

「まだ白を切るならこの傷口を二倍にしてあげてもよくてよ? そのくらいの痛みをあの方にあなたは与えているんですもの。泣かせておいてそのままにしておくなんてこと、なさらないわよね?」  力を込めた指先で傷口が押し開かれて止まりかけていた血がにじむ。けれどジリジリとした痛みはあるが、鳥羽の言うようにあの人のことを思えばそれさえも麻痺していく。 「なるほどな。一緒にいて癒やしを与えてくれる相手、か。そうだなあの人は当てはまるかもしれないな」  これだけ何度も不安にさせて傷つけているのに、思い浮かべればいつでもあの人は優しく笑っている。そしてそんな笑顔に惹かれるのが自分だけではないとわかっていた。  目の前の恋敵は、これ以上の誤魔化しが通用する相手とは思えない。認めるしかないだろう。 「俺もあの人を泣かせたいわけじゃない。でもお前が言うように自分の都合や事情に巻き込みたくないんだ。もしそんなことになれば彼の居場所が奪われてしまうかもしれない。だからいまは傍にいることができない」 「あなたの厄介ごとで先生の立場が悪くなるということかしら? ただお付き合いをしているだけでも十分過ぎるほど問題ですものね」  小さく首を傾げ、思案する素振りを見せる鳥羽の様子は実に落ち着いたものだった。 「詳しくお話を伺うわ。もちろんあなたのためではなくてよ」 「ああ、わかってる」  それがたとえ一筋の光でも、あの人をこれ以上傷つけることが少しでもなくなるのなら。俺はあの人以外なにをなくしても構わない。

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