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第429話 波紋 5-1
講堂に整列する真っ白な制服の群れ。壇上では校長がいささか長い話をしている。生徒たちは少し退屈そうに椅子に腰かけ、欠伸を噛みしめている者もいた。そしてそんな様子を僕は、講堂の二階にある機材室から眺めていた。
「あーもう、なんでお前はそうゆうことするわけ?」
「そんなに怒んなくたっていいじゃん。不慮の事故だってば」
「ストップ、ナオそれ以上動くな。動くなって言ってるだろ、お前馬鹿?」
「倖ちゃんうるさいよっ、馬鹿っていう人が馬鹿なんだからね」
ふいに騒がしくなった背後を振り返ると、床一面に散らばった紙の束。それを挟み、神楽坂と野上がなにやら口論していた。お互い、両手にはこのあとに行われるライブで使う機材を抱えている。いまだ言い合いをしている二人の話を聞いていると、どうやら神楽坂がまとめておいた進行表を、机に足を引っかけた野上が見事にバラバラにしてしまったようだ。
「こら、お前たち二人ともうるさいぞ。荷物を先に片付けて二人で直せ」
まるで子犬の喧嘩みたいにぎゃんぎゃんと言い合う姿に、思わずふっとため息をついてしまった。見た目は背の高い野上と小さな神楽坂は真逆ではあるが、幼馴染みのせいなのか性格だけはどこか似通っている。神楽坂のほうが年上な分だけ少し落ち着いている感じはあるけれど、こうなると大体どちらも変わらない。
「ニッシーちょっと待ってっ、なんで俺まで」
「二人でやったほうが早いだろう。それに手伝わずにあとで順番が違うとか言っても知らないからな」
不服そうな顔をする神楽坂の頭を軽く小突いて早くと促せば、渋々といった面持ちで神楽坂は足早に機材室を出て行った。
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