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第430話 波紋 5-2
「ちょ、倖ちゃん扉閉めるとかいじめでしょっ」
そしてそのあとをバタバタと騒がしく追いかける野上の後ろ姿に、自然と肩の力が抜けた。
「……しっかりしろよ、自分」
目の前で静かに閉まった扉、廊下から射し込む光が遮られふと我に返る。そしていつの間にか緊張して強張っていた自分の身体にため息が出た。
時間が刻々と流れていくのを感じるたび、無意識のうちにそわそわとしている自分がいた。あれから藤堂とは話もできていない。実行委員なので時折すれ違うものの、慌ただしい中で声をかける暇もない。
「このまま、ってことはないよな」
創立祭が終わったら、テスト期間が終わったら、またいつものように会えるだろうか。声を聞けるだろうか。もっと大事なことも気にしなくてはいけないこともあるのに、ずっとそんなことばかりが頭に浮かぶ。
「しっかりしろ、大丈夫だ。信じろ」
きっと藤堂の行動には理由があるはずだ。だから僕は自分の役目をしっかり果たさなければ、動揺してもしもなにか失敗したらどうする。落ち着かなければ――。
「……西岡先生」
小さく独り言を呟きながら床に散った紙を拾い集めていると、誰もいないはずの部屋で自分の名前を呼ぶ声に気づいた。その声に慌てて顔を持ち上げれば、閉まったはずの扉の前に鳥羽が立っていた。
「あ、どうした?」
突然のことに声が上擦る。けれどそんな僕に、鳥羽は気づかぬ素振りでにこりと笑みを浮かべた。
「少し配置換えがあったのでこれを」
差し出された紙は生徒会役員や実行委員の行動表だった。それには今日一日、誰がどの場所でなんの仕事をするかが記載されている。
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