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第433話 波紋 6-1
小さなメモにさして長くはない言葉が並ぶ。それを僕は鼻をすすりながら何度も何度も読み返した。連絡が取れない理由も言い訳もそこには書いていない。
だだ、信じて待っていて欲しい――という想いだけ。けれど綺麗な文字で綴られたその想いや言葉で、膨れ上がっていた不安が嘘みたいに消えた。
「早く帰ってこいよ。ちゃんと謝りたいんだ。どんな状況でもお前を全部受けとめてみせるから」
いまの僕にできることは藤堂を信じて待つことだけ、そう思うと少しだけ寂しい気持ちになるけれど、藤堂が信じて待っていて欲しいと言うならばいくらだって待つ。
本当に助けて欲しいと思った時は、きっと藤堂から手を伸ばしてくれるはずだ。
「だから、どんなことがあっても待ってる」
もし藤堂が傷ついて帰ってきたなら、それをすべて受けとめて抱きしめてあげたい。もしも助けて欲しいと手を伸ばしたなら、僕はその手を絶対に離さない。僕が帰る場所だと藤堂が言ってくれたあの時、この先なにがあっても藤堂のことを守るんだと、どんなことがあっても彼を裏切ったりしないんだと僕はそう心に誓った。
いままで彼が与えられて来なかった家族の愛情も安らぎも、自分が傍にいて注いでいきたいと思う。時間はかかるかもしれないけど、少しずつ藤堂のくれる優しさと想いの恩返しをしていきたい。
「お前と出会わなかったら、僕はいまここにはいないんだ」
これからも生きてと背中を押してくれたあの日から、言葉にはしきれない。いくら返しても返しきれないほどの想いが僕の胸にある。
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