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第434話 波紋 6-2
いつものように笑って、ただいまと帰ってくる。そんな藤堂の姿を思い浮かべれば、頭をもたげしおれていた気持ちも浮上して、まだまだ頑張れるような気がしてきた。
「ニッシー遅くなった! 散らかしたままでごめん……って、あれ?」
「遅いぞ、神楽坂」
勢いよく開いた扉に視線を向ければ、きょとんとした表情で神楽坂が目を瞬かせていた。それを苦笑いで返すと、その後ろからひょこりともう一人が顔を出す。
「あれ? ニッシー片付けてくれちゃったの?」
「お前たちを待ってるあいだ、ずっと散らかった部屋にいるのは落ち着かないからな」
拾って並べなおした進行表はまとめてホチキス留めをした。机の上に置いていたそれを取り、いまだあ然としている神楽坂の頭をそれで叩けば小さく首を傾げられた。
「あ、ちょっと元気になった?」
「ん?」
「いや、うん……なんでもない。元気ならいいんだ」
そう言ってへらりと笑った神楽坂に思わず面食らってしまった。相変わらず勘が鋭いというか、人の感情に敏感でまいってしまう。
それともやはり僕がわかりやすい顔をしているのだろうか。こんな調子でこの先、他人の目を誤魔化せるのかと不安になる。ましてや今日は嫌でも藤堂の母親と顔をあわせることになるというのに。
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