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第435話 波紋 6-3
「なになに? なんの話」
「うるさいな、ナオには関係ない話」
「なにそのドヤ顔。ちょっとむかつくんですけど」
「ほら、まだまだやることあるんだから喧嘩するならあとにしろよ。さっさとしないとここ閉めるぞ」
また口喧嘩を始めた神楽坂と野上の頭と額を丸めた進行表で叩くと、僕はゆっくりと機材室から足を踏み出した。廊下で立ち尽くしている二人に鍵を振って見せれば、神楽坂も野上も慌てて機材室に飛び込んでいった。そして廊下で待つこと五分、二人はその間も小さなことで言い合いをしながら、最後の機材を抱え出てきた。
「ほんと、お前たちはいつも賑やかだな」
「ちっがうって、ナオが悪いんだって」
「そーやってなんでも俺のせいにすんのやめてよ」
「はいはい、ほら急げよ」
二人のやり取りをを見ていると、悩んで落ち込んでいる自分が馬鹿馬鹿しく思えてくる。微笑ましい二人の背中を急くように押して、僕は追い払うように手を振った。
「ニッシー」
「ん? なんだ、まだいたのか?」
機材室の施錠をしていると、背を叩かれた。遠ざかっていった足音が聞こえたので、てっきりもういなくなっているものだと思っていたが。振り返った先には笑みを浮かべた神楽坂が立っていた。
「なんだ? まだなにか用があるのか」
「いや、そこにはないんだけどさ」
忘れ物でもしたのかと思い、鍵を開けようとした僕に神楽坂は大きく首を振り小さく笑みを浮かべる。
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