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第440話 波紋 7-4
人を見下ろすその仕草は、子供の頃から何度も目にしてきた。いつだって自分が優位なのだと、旦那や足元の人間をあざ笑うこの女が、俺は物心ついた時から好きにはなれなかった。
「そう言えば、いまはどんな子と付き合ってるの? マメに弁当なんか作っちゃって、まさか本気なの?」
ふっと目の色が変わったその瞬間、心臓の辺りがヒヤリとした。
「……あんたには関係ないだろ」
「関係なくはないでしょう」
「いままで放っておいて、自分の都合のいい時だけ母親ぶるなよ」
「もしかして、あなたのしてきたこと私がなにも知らないと思ってるの? ちゃんと調べてあるのよ」
ため息交じりにそう言って、短くなった煙草を灰皿でねじり消すと、目を細め不敵な笑みを浮かべた。胸の奥でざわりと不快なものがよぎった。
「あなたがいままで誰とどんな場所で遊んでいたかも、ちゃんと知ってるわ。高校卒業したら、ここを出て私との縁を切りたがってることも、ね。……随分と貯め込んだわね」
歯噛みした俺を尻目に肩を揺らして笑い、床に放って置かれた鞄からA4ほどの封筒を取り出すと、それを指先でつまみ逆さにして振った。するとそこから、バラバラと写真や折り畳まれた紙がこぼれ落ちる。
床に散らばった写真は中学時代のものや、ごく最近とも言える半年くらい前のものがあった。その中にはBAR Rabbitに通っていたその頃の写真も数多くある。
「こんなもの集めて、悪趣味だな」
「子供の不祥事は保護者の責任でしょう? そうなる前に片づけられるものは始末しておかないと、のちのち面倒だわ」
最後に写真とは異なる重みで封筒から落ちたのは、なにかが印刷された紙の束だ。
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