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第442話 波紋 8-1
微かに震える指先で紙を拾い上げ、息が止まりそうになる。そこには俺の携帯電話に登録してあるアドレスや電話番号。そして発着信履歴やメールの送受信履歴がずらりと並んでいた。
その中には彼のメールアドレスや電話番号も記載されていた。元々メールも少ない彼だから、短い文章だけでは誰なのか判別はつかないが、明らかに目星をつけて彼とのやり取りだけが抜き出されている。もしものことを思えばぞっとする。
「わかった? 私がいつでも行動を起こせること、忘れないでおくといいわ」
このままでは遅かれ早かれ彼の存在を知られることになる。でもそれだけは絶対に避けなければ、公になった途端に彼の立場が危うくなってしまう。
「思い出づくりは卒業までよ。そのあとは私がちゃんといい娘を見繕ってあげるわ。本気だって言うなら早めに別れておくことね」
「……」
いまの俺にできることはあるだろうか。あの人を守るために俺はどれを選択すればいい?
考えるたびに不安ばかりが押し寄せる。どうすれば、彼を守れるだろう。彼を手放さずにいるために、俺はなにを手放せばいい?
重苦しい感情で息が詰まりそうになった。目の前が真っ暗になって、身動きが取れなくなりそうだ。
俺はあの人の隣にいつまで立っていられるんだろう。そうを思うだけで怖くて、どうしようもなくなる。俺はあの人の傍でなければ、息もできない。
「……っ」
急に息が詰まり、身体が揺れる感覚がした。そしてそれに気づいたのと同時か、ふっと身体が重たく感じた。
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