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第447話 波紋 9-2
「あ、でも、A備品なら鳥羽と峰岸も持ってなかったか?」
「まあ、そうなんですけど。会長はいまどこにいるかわからないし、鳥羽先輩も持ってはいますけど。ご両親が来ているところに割り込んでいく図々しさは、俺にないです」
肩をすくめた柏木の視線を追えば、鳥羽は両親やほかの来賓に囲まれ談笑していた。少し前に自分も紹介をされたが、会社の社長をしているという鳥羽の父親は常人とはどこか違う貫禄というか風格があり、少し気後れしてしまいそうな人だった。
そんな彼の周りでは様々な人が入れ替わり立ち替わり、挨拶を交わし名刺の交換をしていた。
「大人のお祭りっていうのは、こういう意味だったんだな」
その光景を見ながら僕は思わず感心してしまった。
「そうですよ。色んな人が出入りするし、こういう時じゃなければ直接会えない人もいますからね」
「そうか」
あの時は峰岸に大人のお祭りだからと言われ、そういうものなのかとよくわからないまま頷いてしまったが、今頃になってその意味を本当に理解した。午後から行われる懇談会の時間が短く、やけに昼休憩が長いのはこのためだったのか。
「先生、行きますけどいいですか?」
呆ける僕に肩をすくめ、柏木はゆっくりと歩き出した。そのあとを追いかけながら、改めて創立記念祭かとしみじみした。
「なにか足りない備品あったか?」
柏木の言うA備品とは、主に机や椅子などの備品を保管している備品室だ。このあとに必要なものは一通り会場に出されたと思ったのだが、まだなにかあったのだろうか。
「思ったよりもこのまま懇談会に参加する人がいるみたいで、椅子が足りなくなりそうなので少し足そうかと」
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