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第449話 波紋 9-4

 思えば自分にも経験のあることだった。確かに自分も、あの時はそこに恋愛感情があるだなんて夢にも思わなかった。向けられた感情や好意の内側にあるものに、まったく気づくことができなかった。  渉さんに好きだと告白された時、冗談ではないかと思ったほどだ。彼は僕の中で友達以上の存在ではなかった。でもそれは渉さんだからというわけではない。例えばもしそれが身近にいる飯田だったり間宮だったりしても同じことだと思う。いままで異性しか恋愛対象と思っていなかった僕にとって、友人に告白されることは予想外のことだったのだ。だからそれを野上に当てはめてみても同じこと、受け入れられない拒絶はいわゆる普通の反応というわけだ。 「そうか、そうだよな」  改めて考えると当たり前に感じ始めていた感情は、そうではないのだと実感させられた。いまは藤堂を好きだと大切だと躊躇いなく言えるが、告白されたばかりの頃はまだ同性同士の恋愛を他人事のように感じていた。 「西岡先生が気づいたのは、意外でした」 「え?」 「うちの生徒会は癖があるメンツが揃ってるんで、すぐバレたのは、まあ納得いくんですけど。西岡先生ってそういうの疎いかと思ってたから、正直驚きましたよ」 「そ、それは、あれだ。あんまり偏見がないと言うか」  柏木の言葉に心臓が大きく跳ねた。

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