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第453話 波紋 10-4

「あ、いや、これは」 「だから、無意識だろ? まあ、無視されるよりはマシだ」  あからさま過ぎる自分の行動に思わずうろたえてしまう。いくらなんでもこれは峰岸に失礼だ。 「相変わらずお人好しだな。あんたが気にすることじゃないだろ。俺が悪いんだからそんな顔すんなって」  峰岸が僕の目の前で立ち止まる。そしてこれ以上後ろへ下がってしまわないよう身構える僕を見下ろし、ふっと眉を寄せ困ったように笑った。 「悪かったよ、もう絶対にしない」  ゆっくりと腕を持ち上げ、僕の髪を軽くかき回すようにして撫でると、峰岸は僕の横を通り過ぎていく。でも歩調を速めその場を去ろうとする峰岸の背中を、僕は引き止めていた。 「峰岸、お前のことが嫌いなわけじゃない。ほんの少し、いまは戸惑ってるだけだ」 「……」  僕にブレザーの端を掴まれ、峰岸は踏み出す足を止めた。しばらくそのまま動かぬ峰岸の背中を見ていると、微かなため息と共に振り返る気配を感じた。僕はとっさに視線を落とし、強く握ったブレザーの端を見つめる。 「センセ、あんた意外と小悪魔だよな。誰にでもそういう態度とるなよ。勘違いするだろ」  再び僕の髪を何度もかき回して、峰岸はブレザーを掴む僕の手を解きその手を握った。指先を強く握られた感触に僕が顔を持ち上げると、峰岸は至極優しい笑みを浮かべた。

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