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第454話 波紋 11-1

 手を握る峰岸に引かれ、来た道を戻る。手を放すタイミングを失ったら、なんだか振り解けずそのままになってしまった。こういうところも本当はよくないんだろうなと、峰岸の言葉を思い返す。  小悪魔とか言う意味はよくわからないが、自分がよかれと思った言葉や行動が相手を傷つけたり、困らせたり、勘違いさせたりするということだろうか。自己反省すれば、心当たりが多い気もした。僕にとっては嘘や誤魔化しではないけれど、相手にとってはそれが気まぐれや不誠実に見えたり、上辺を取り繕っているように見えたりするのかもしれない。いつもなにを考えているのかわからないと言われていた、それはきっとそういうことなんだろう。でもそうすると僕がわかりやすいと言う、藤堂たちはやはり聡いなと感心する。 「なにまた考え込んでんだよ。可愛いなぁ、ほんと」 「うるさいな、可愛くない」  笑いを堪え喉を鳴らす峰岸に、僕は腕を引き手を振り解いた。けれどそんな僕の頭をなだめるように撫でて、峰岸はやんわりと目を細めて笑う。なぜこんなにも人に優しくできるんだろうかと、ふと問いたくなったけれど、それを聞くことはなんとなく野暮なことだと思えた。そしてそれと共に少し心苦しく感じる。  確かに僕も峰岸のことは好きだと思う。もし峰岸が傷ついたり泣いたりしたら、無条件に手を差し伸べるだろう。でもやはりそれは藤堂に対する好意とは明らかに違う。 「やっぱり、峰岸は家族って感じなんだよな」  友人という感覚とは少し違う。明良のような身近さはあるけれど、歳が離れているせいか庇護欲がある。

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