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第455話 波紋 11-2
一見すると僕なんかが守らなくても自分で立ち回れてしまいそうだが、大人びている分だけ心配にもなるのだ。
近くで峰岸という人間を見て知らなければ、きっといま拒絶していた。でも傍で彼の本質を垣間見るたび、憎めなくなる。
「あ? 飼い犬に噛まれたくらいの感覚かよ」
「んー、そうだな」
顔をしかめた峰岸にわざと冗談めかして言えば、肩で大きく息をつかれた。
「頷くなっつーの」
地味に傷つくと、苦笑いを浮かべた峰岸に手のひらで軽く後頭部を叩かれた。けれど先ほどまでしょんぼりと丸まっていた背中が、いつものようにぴんと縦に伸びたのを見て、僕はほっと息を吐いた。
そして僕に対する峰岸の想いが自分と同じだったらいいのにと、そう思ってしまった。相変わらず僕はずるい大人だ。
「峰岸?」
ほんの少し先を歩いていた峰岸の足が急に止まった。立ち止まった峰岸に道を塞がれ、僕もその場で足を止める。
そこは二階へと上がる階段の手前だった。二階にある特別教室へ戻るならこの階段を上っても遠回りにはならないが、もし懇談会を行う教室へ行くならこのまままっすぐ進み、生徒玄関と職員室前を通り過ぎなければならなかった。僕は身動きしない峰岸の横顔を見つめた。
「どうした?」
返事をしない峰岸の視線の先が気になり、身を乗り出そうとしたが無言のまま腕で制された。
「おい、峰岸」
「センセ、上に戻れよ」
わけがわからず先へ進もうとする僕を、峰岸は少し乱雑に階段へと押しやった。
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