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第457話 波紋 11-4
その整った顔立ちと若々しい華やかな容姿は、藤堂のような大きな子供がいることを想像することがまったくできなかった。
「大きな声を出さないで頂戴」
こめかみに手を当て肩をすくめる彼女は、女性にしてはあまり高くない声音だった。ゆっくりはっきりとしたその声は、随分と落ちついた印象を受ける。でもそれはどこか威圧的で、相手を突き放すような冷たさも感じた。
「あんたが勝手なことをするからだろう」
「なにを言ってるの。保護者が学校の先生に近況を報告するのは当然のことじゃない」
それは二人の短いやりとりの中でさえも感じるほどだ。苛立った様子で声を荒らげる藤堂に対し、彼女はそれをまるで他人事のように聞き流し、その怒りの意味を理解しようとしていないかに見えた。
「近況? 俺がいつ大学へ行くなんて話した」
「あなたには私のいままでの時間を返してもらうって、言ったでしょう?」
ため息と共に吐き出された彼女の言葉で、藤堂の表情がさらに険しくなる。
「俺は断るといったはずだ」
「あら、そうなの? てっきり承諾したのかと思ったわ。急に大人しくなったのは、そういうことじゃないの? まあ、違うのだとしても、これから先、あなたが選んでいい道はないのよ」
もし彼女が藤堂の母親なんだと知らなかったら、言葉を交わす二人のあいだに親子の縁があるなど想像もしないだろう。彼女は自分のことを母親ではなく保護者だと言った。すでにその時点で二人には隔たりがあるのだ。
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