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第461話 波紋 12-2

 ここで藤堂が反抗することはまったく予測していなかったのかもしれない。 「本気だ」 「……あなた、後悔するわよ」  毅然とした藤堂の返事に、彼女は一瞬言いかけた言葉を飲み込んだ。そして無理に落ち着き払った声を出そうとしたのか、次に吐き出された彼女の声はわずかに高くなった。 「あなたの自由にできると思わないで」  しかしその声に藤堂はなにも答えなかった。  吐き捨てるような言葉と共に、先ほどよりも乱雑な足音が近づいてきた。僕と峰岸はその音が階段を上り、聞こえなくなるまで身をひそめて待った。しかしそのあいだにも、もう一つの足音が遠ざかっていくのが聞こえる。 「もう行ったか、っておい」  階上から音が聞こえなくなるのを確認すると、僕は思うよりも先に階段下から飛び出していた。背後から呼び止める峰岸の声など、気に留めている余裕はなかった。 「藤堂」  階段とは反対の方向。懇談会が行われる教室へと歩いていた藤堂の背中を、僕は必死に追いかけていた。 「佐樹、さん?」  突然呼び止められた藤堂は、戸惑いと驚きを混ぜた少し複雑な表情をして振り返る。でも僕は藤堂のそんな反応よりも、自分の名前を呼ぶ声に、自分を見る眼差しに胸を高鳴らせた。  立ち止まった藤堂の腕を、逃がすまいと僕は強く掴んでいた。 「藤堂」  ほんの少しの距離を走っただけなのに、うるさいほどに心臓が脈打っている。

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