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第464話 波紋 12-5
峰岸も同様で、呆れこそしてもその様子に憤慨することはなかった。
「ったく、世話がやける奴らだな」
「な、なんだ」
二人の様子を見比べていると、突然峰岸に手を掴まれた。そしてその行動に僕が驚き、藤堂がなにかを発しようと口を開きかける前に峰岸は歩き出す。予測していない動きに、僕は半ば引きずられるようにして歩いた。
「どこ行くんだよ」
なにも言わずに黙々と歩みを進める峰岸の手を引いて返事を求めるが、振り返るどころかなんの言葉も返してこない。どうしたらいいのかわからなくなった僕は、困惑したまま後ろへ視線を向けた。すると藤堂が先ほどと変わらぬ不機嫌さを漂わせながらもついてきた。
二人でいる時はよく話をしてくれるが、誰かがいると途端に無口になる藤堂にもやはり困惑する。
「峰岸?」
生徒玄関と階段前を通り過ぎ、二メートルほど歩いたところで、峰岸はベルト辺りに引っかけていた鍵束を後ろ手に取り、足を止めた。
峰岸が立ち止まった場所には、明かり取りのガラス窓に、内側から白い紙が貼られた引き戸があった。そこは普段生徒が出入りできない部屋で、教員用の教材などが置かれている資料室だった。
「なんでここの鍵まで持ってるんだよ」
戸惑いながらその様子を見つめていると、峰岸は片手で器用に鍵を探し出し、目の前の引き戸を開錠した。ガラリと音を立てて引かれた戸の奥は、電灯が点っていないので当たり前だが薄暗かった。
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