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第467話 波紋 13-2

 きっと身近に自分の感情を吐露する場所が少なかったからだろう。笑顔の裏に見え隠れしていた彼の不安が、少しずつわかり始めてきた。  愛情をまっすぐに向けてくれるその反面、藤堂はいつも僕が離れていくことを恐れていたんじゃないだろうか。だからいつでも触れて、僕という存在をその手で確かめようとする。 「あんまり自分の中に溜め込むな」  腕を伸ばして頭を撫でてやると、それは寄り添うように僕の手へ傾いた。微かな重みを感じて、なぜか無性に泣きたくなる。込み上がってきたこの感情の意味を言葉にはできないけれど、藤堂のぬくもりに胸が締めつけられる想いがした。  いままでどれだけその内に飲み込んできたんだろう。独りで闘ってきたんだろう。僕には到底、計り知れないものを抱えてきたに違いない。 「しなければならないことじゃなく、お前のしたいことをすればいい。ちゃんとお前が選んでいいんだ」  それはこうして簡単に言葉にできるほど、容易いことじゃないかもしれない。母親とのやり取りだけを見ても、平坦な道は期待できないことがわかる。想像する以上に波乱に満ちているかもしれない。それでも藤堂が自分を押し殺して生きていくことがないように、ずっと傍にいて支えていきたい。 「俺が選んだ答えは、間違っていませんでしたか?」  まるで独り言みたいに小さく問いかけられたその言葉に、間違いなどであってたまるか――そんな怒りにも似た感情が湧いてきた。

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