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第473話 決別 1-2
ここは駅構内の改札近くにあるカフェ。三十席程度ある客席は改札の傍にあることもあり、ほぼ満席。店内には同じ制服がちらほらとあり、同じように教科書とノートを広げていた。ガラス張りの客席から外へ視線を流せば、改札を行き来する人の波が見えた。時間は十八時を過ぎ、会社帰りと思しきスーツ姿の人波が増えてきた。
「俺にだってそのくらいの感情はある」
もちろんそれは佐樹さんと再会してからの、ここ数年の話だけれど。
「そうでしたの、それはよかった。それよりも、あの二人の誘いを断って私と試験勉強していてよかったのかしら」
なんでも見通していそうな、大人びた目をして鳥羽は笑う。けれどそれは不思議と居心地の悪さを感じさせない。鳥羽は俺に比べたら真っ当な人間だが、性質が近い人間でもあるからだろう。かといっていつも隣で賑やか過ぎるほど賑やかな、あずみと弥彦が煩わしいわけではない。あの二人はごく普通で当たり前な世界を与えてくれる。親がいて兄弟がいて家族がある。どこか優しくて温かいそんな世界。正直眩し過ぎてひどく辛く思った時期もあったが、それでもそんな中にいると自分も不思議と人間らしくいられる気がするのだ。
「話があるって先に言ったのはお前だろう」
鳥羽に比べさして進んでいない教科書を閉じて、俺はカップを持ち上げると温くなった珈琲を口にした。そんな俺の反応にあら、ごめんなさいと感情のこもらない謝罪をし、鳥羽はまた笑った。本当は気づいているのだ、俺があの二人の誘いを断ることに躊躇いを見せたことを。
「そうでしたわね。でもなにもないなら問題ないかしら」
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