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第476話 決別 2-1

 ガラスの向こうを見る鳥羽の視線につられ首を動かしたと同時か、コツコツと向こう側からガラスが叩かれた。ひらひらと手を振り、ゆるりとした笑みを浮かべた人物に俺もまた驚きをあらわにする。 「お前ら最近、噂になってるぞ」  俺たちのいる席に来るなりそう言って、峰岸は遠慮もなく隣の椅子に置いていた俺の鞄を背もたれにかける。そして声をかける間もなく隣に座り、テーブルに片肘をついた。相変わらずのマイペースさに俺と鳥羽は一瞬だけ顔を見合わせる。 「会長と噂になるよりマシですわ」 「なんだそれ、俺じゃ嫌なのかよ」 「私は会長となんてごめんですもの」  甘いキャラメルの匂いがする珈琲を飲みながら、峰岸はあからさまに顔をしかめる。その苦々しい表情に鳥羽はふいと顔をそらし、口元に手を当て小さく笑った。 「お前、面倒くさいからな」  まだ俺たちに上級生がいた頃。峰岸と噂が立った鳥羽が、何度となく上から難癖つけられていたのを見かけたことがある。いまでこそ鳥羽にそんなことを言える奴らはいないが、本人の容姿や性格と相似て、峰岸の周りは派手な連中が多い。結局のところこいつは相手にするにはひどく面倒くさい男なのだ。 「本当、面倒くさいですわ」 「うるせぇよ」  冗談めかして俺に乗じた鳥羽に、峰岸はもの言いたげに目を細めた。 「藤堂がよくて俺が駄目ってどういうことだよ。大体こいつだって俺と変わんねぇだろうが」 「俺とお前じゃ全然違う」 「違わねぇ」 「二人とも、子供みたいなところは大して変わりませんわ」  俺と峰岸のくだらない言い争いに、鳥羽は肩を揺らし笑みを深くしていた。

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