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第477話 決別 2-2
それにしても峰岸一人増えただけで途端に場の空気が賑やかになる。そしてどことなくこちらを振り返る視線が増えた。いつもながら目に見えてわかる華やかさがある男だ。
「なに、帰んのか」
教科書とノートを片付け始めた鳥羽に、峰岸は眉間にしわを寄せた。
「会長がいると目立ち過ぎて嫌ですわ」
「おい、それじゃあ、マジで俺がスゲェ邪魔した悪もんみてぇだろうが」
「正しく言うと、あなたたちが揃うと悪目立ちし過ぎですの」
不機嫌を隠さずに口を曲げた峰岸に、鳥羽は笑って肩をすくめた。
「俺は悪くない」
一年の頃からよく周りに言われていたが、目立つの俺のせいではない。峰岸が目立ち過ぎるから俺まで巻き込まれるのだ。
「あ? 俺だけになすりつけんなっつーの。ってか、お前ら二人でも十分目立ってるんだよ!」
ますますふて腐れたように口を尖らせた峰岸は、カップを両手で掴みテーブルに両肘をつく。中身をわざとらしく音を立てて啜りながら、じとりと鳥羽に視線を向けた。デカイ図体に似合わぬ子供じみた態度に、鳥羽は小さく声を上げて笑った。
「ふふっ、私はこれで失礼しますわ。会長は彼に用があったのでしょ」
椅子に置いていた鞄を肩にかけ、空になったグラスを手にすると、鳥羽はさっさと席を立ち俺たちに背を向けた。
鳥羽がいなくなりしばらく沈黙が続く。隣の峰岸はカップの端をくわえ、まっすぐ前を見たままこちらを振り向こうとしない。無言のまま動かない峰岸にため息をついて、俺は目の前のノートを閉じ教科書に重ねた。
「相変わらずなにもしてないんだろう」
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