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第478話 決別 2-3
「めんどくせぇ」
「たまには勉強しろ」
ぼそりと呟いて目を細めた峰岸の頭を、ため息交じりに教科書とノートで軽く叩く。勉強が嫌いな割にこの男は不思議と成績が落ちない。それをいいことに努力を怠っているが、そのうち痛い目でも見たらいいと思ってしまった。
「邪魔だ」
椅子の背もたれにかけられた鞄に手を伸ばすと、急に後ろへ重心を傾けた峰岸に遮られる。
「お前に殴られる覚悟はしてたんだけどな」
「俺に殴られたいのか」
「んなわけあるかよ。そういう趣味ねぇし」
「じゃあ、殴る理由もないだろ、どけ」
納得いかないようなムッとした表情を尻目に、無理やり背中を押す。峰岸は渋々という態でまたテーブルに肘をついた。
「なぁ、藤堂。……ちゅーして」
「は? 絞め殺すぞ」
鞄に教科書やノートをしまっていた俺の手を掴み、こちらを振り向いた峰岸に思わず片頬が引きつった。けれどあからさまな態度で眉間にしわを寄せた俺に、峰岸は吹き出すようにして笑った。
「そっちのほうがお前らしい」
いつまでも肩を震わせ笑っている峰岸の手を振りほどいて、俺は深いため息をついた。
本当は殴られる理由も殴る理由もはじめからわかっていた。あの時、あの瞬間、鳥羽が来なければ俺は間違いなく峰岸を殴り飛ばしていただろう。でもいまこいつを殴るのは違う気がした。誰が悪かったとか考えるなら、やはり俺が悪かったのだろうと思う。
「馬鹿だな、お前は」
なんでまた見込みのないところに転がっていくんだろうか。
「好きなんだろ」
あの時、挑発するかのように俺を見据えて、決して彼を離さなかった。
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