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第480話 決別 3-1
あいつの答えは予想できていた。含みがある性格だけど自分の感情には正直な男だ。
「好き、か」
けれど改めて聞かされると胸の奥から嫉妬心が沸いてくる。しかし聞かなければいいものを、わざわざ聞いたのは自分だ。
別にあいつの気持ちを確かめて、どうにかしたかったわけではない。いやでも確かめることで牽制したかったのかもしれないと、戸惑ったあいつの表情を思い返した。我ながら随分とあざとい真似をしたと思う。でもそれが子供じみた独占欲なのだとしても、こればかりは自分でもどうしようもなかった。
電車のドアに映ったしかめっ面を見て、思わず自嘲気味に笑ってしまう。本当にあの人のことになると余裕がない。これ以上不安にさせたり、泣かせたりしなくて済むような、もう少しまともな人間になりたい。
「……ほんと、どうしようもなく子供だな」
すぐにカッとなったり、後先考えられなくなったり、自制心と言うものが足りない。そのくせ、後悔してすぐにへたれる。
ドアに頭を寄せ重たいため息を吐き出したのと同時か、制服のポケットで携帯電話が震えた。いまはまだテスト期間中なので、あの人から連絡が来ることはない。なに気なくそれを開くとメールが一通、弥彦からだった。何時に帰ってくるのかというその内容に、もうすぐ駅に着くと返せば、わかったという返事がすぐさま返って来た。用件らしい用件を伝えられぬまま了承されても、こちらはさっぱりわからない。
とりあえずなにかあるのだろうと、さして気にせず電車を降り、俺は帰路についた。
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