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第481話 決別 3-2

 駅から徒歩十分ちょっとで自宅へ着くが、その少し手前に弥彦とあずみの家が向かい合わせに建っている。玄関先に明かりが灯っている弥彦の家を横目に通り過ぎようとしたところで、突然目の前に人が飛び出してきた。 「優兄、おかえり」 「あ、希一?」  驚きをあらわにしている俺の前で、にこにことした笑みを浮かべているのは弥彦によく似た弟の希一だった。一瞬だけ弥彦と間違えそうになった希一は、ゆるい天然パーマで細身のひょろりとした長身。笑うと細目がさらに細くなる――そんなところさえも弥彦にそっくりだ。違う点は真っ黒な髪と少し低い身長くらいだ。けれど中学一年で百七十センチを超えているので、そのうち弥彦に並ぶのではないかというほどの成長具合だった。 「どうしたんだ」  まるで待ち伏せていたかのようなタイミング。いや、いたかのようなではなく待ち伏せていたのだろうが、その理由がいまいちよくわからなかった。 「兄ちゃんがそろそろ優兄が帰ってくるから捕まえてこいって」 「ああ、弥彦か」  先ほどのわかったという返事はこういうことだったのか。しかも希一を外で待たせておけば、俺が素通りできないとわかってのことだろう。 「ご飯一緒に食べよう」 「まだ食べてないのか?」  三島家の夕食は一番下に小さい弟がいるせいもあり、いつも日が暮れる頃には済んでいるというくらい早い。

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