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第482話 決別 3-3
もう十九時を過ぎていると言うのに、まだというのは珍しかった。
「遅くなって悪かったな」
「全然、俺もさっき帰ってきたんだ」
腕を引く希一の頭を撫でてやると、はにかんだ笑顔を浮かべた。帰ってきてからそのまま外で待っていたのか、希一は制服である紺色のブレザーにグレーのズボンといういでたちだった。
「遅いってことは、部活かなにかやってるのか」
「うん、俺、バスケ部に入ったんだよ」
「そうか、お前は弥彦と違って運動神経もいいし、身長も役に立つかもな」
「兄ちゃんは宝の持ち腐れだよね」
どこかそわそわと落ち着かない様子で話す希一は、まだ色々と話したいことがあるのだろう。そういえば春になってから慌ただしく、ゆっくりと話す機会もなかった気がする。
「誰が運動神経ないって?」
玄関扉を開けると、エプロン姿の弥彦が腕組みをしながら仁王立ちしていた。兄の予想外の登場に、希一はしまったという焦りの表情を浮かべて俺の後ろに身を隠した。
「ゆうゆ、おかえり」
弥彦の足元では一番下の弟、貴穂が満面の笑みを浮かべている。
「ただいま」
腕を伸ばし玄関のたたきに降りようとした貴穂を、すんでのところで抱き上げる。すると小さな手で強く抱きついてきた。癖のないまっすぐな薄茶色の髪を撫でれば、満足したのかその力は緩まり、頭を肩に乗せ落ち着いたようだった。
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