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第483話 決別 3-4

「貴穂、兄ちゃんはこっちだぞ」  俺の腕に収まった弟に両腕を伸ばした弥彦は、いやいやとするように顔を振る貴穂の返事にがっくりと肩を落とした。 「ますます似てるところがなくなってきたな」 「うるさいな、仕方ないだろ。貴穂は母さん遺伝子九十九パーセントなんだから」  三島家の父と弥彦、それに希一は、三人並べるとひと目で親子だとわかるくらいよく似ている。しかし貴穂だけは亡くなった彼らの母親によく似ているので、弥彦や希一とは顔立ちや容姿がまったく違う。目鼻立ちもはっきりしていて、時折女の子に間違えられることもあるほどだ。 「ほら、希一。いつまでも優哉の後ろに隠れてないで、手ぇ洗って着替えておいで」  ため息交じりの弥彦がこちらに背を向けると、希一はその隙にと言わんばかりの勢いで玄関の隅に置いてあった鞄を手に、目の前の階段を駆け上がっていった。相変わらずの賑やかさに思わず笑ってしまう。 「優哉も笑ってないで、早く上がって手ぇ洗いなよ」 「はいはい」 「返事は一回っ」  軽返事をするとすかさず弥彦の声が飛んでくる。それに苦笑いしながら俺は家に上がり、弥彦のあとをついて行く。  廊下の手前、左手にある扉から入るとそこはリビングで、右奥がキッチン、その手前がダイニングになっている。ダイニングには四人がけの広い食卓テーブルがあり、大人の食器が三セットと小さな食器がひとつ並べられていた。

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