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第486話 決別 4-1
弥彦とあずみに初めて会ったのは幼稚園、俺が四歳の頃だ。途中からいまの家に越してきた俺とは違い、二人は物心つく前から一緒にいた。母親同士の仲がよかったらしく、いまと変わらず昔も姉弟同然だった。めったに送り迎えもなく、家に一人でいることが多かった俺を、二人の親たちが毎日気にかけるようになり、自然と三人でいることが増えた。弥彦のところに弟が増えてからはさらに周りは賑やかになっていった。
いまも毎朝、学校へ行く前に必ず迎えに来て、休みの日には家にいる俺を呼び出しては食事だ買い物だと連れ出す。佐樹さんに会って再会するまでのあいだ、やさぐれてあれ以上おかしくならなかったのは、二人のおかげなのかもしれないといまなら思える。
「あれ? 貴穂は寝ちゃった?」
「ああ、いつの間にかぐっすりだ」
希一の勉強を見ているあいだもずっと、膝の上でにこにこと楽しそうにしていた貴穂だったが、さすがに二十一時を回りこくりこくりと頭が船をこぎ出していた。いまは小さな身体を丸めて寝息を立てている。
「今日は随分はしゃいでたから疲れたのかな」
食事の片づけをして、洗濯物をまとめ、希一を風呂に放り込んでと、慌ただしく家事をこなしていた弥彦が、眠った貴穂の顔を覗き込んだ。小さな頬を指先でつつくが、それでも貴穂は起きる気配はない。
「いつもならまだ起きてるんだけどね」
「そうなのか」
「うん、ちょっと寝かしつけちゃうよ」
リビングから続く和室に足を向け、弥彦はそこに父親の布団を敷く。
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