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第489話 決別 4-4
あずみもそうだ。普段はあれこれ詮索するのが好きなくせに、家のことには一切立ち入らない。昔はそんな態度が一線を引かれているように思えていたが、そうじゃないと最近になって気づいた。
「なにかあったら、ううん。なにもなくても、いつでもうちにおいでよ。いつでもここに帰ってきていいんだからさ」
立ち入らないのではなくて、立ち入れないんだ。父親がいなくなってから余計に俺とあいつの確執が強くなって、触れればすぐに波風立つような荒れた状況になった。だから二人はその外側でひたすらに、俺が振り向くのをじっと待っていたんだ。
「俺たちは優哉のこと、家族だと思ってるから」
家族――元々それは自分にとって縁遠いものだと思っていた。
「……お前の家も、あずみの家も、いつも賑やかで明るくて、正直いつも居心地が悪かった」
「え?」
温かくて優しい普通の家族。それに加えてもらえることが嬉しいと思う反面。眩しくて綺麗過ぎて、自分の居場所ではない気がして、それが居心地が悪くて仕方がないとも思っていた。
「でもいまは、やっと引っかかっていたつかえが取れた気がする。今日はお前たちといて、不思議と安心したし、素直に楽しかったよ」
いつもなら賑やかで明るい場所にいるのが、心許なかった。楽しいはずなのに、家に帰るとどこか虚しさもあった。それなのにこんな気持ちになるなんて思いもよらなかった。
「それって……もしかして西やんのおかげかな?」
あの人の手で、なんのしがらみもなく放り込まれた場所は、ただただ温かかくて。誰かといることがあんなにも心安らぐものなんだと教えられた。そしてあの人と一緒に過ごして、あの人の家族に触れて、それを知ったら振り返った先にあったここも、それと違わないんだということに今更だが気づいた。
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