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第493話 決別 5-2
「もうっ! え? じゃないわよ。お母さん前に言ったじゃない。帰る前に一回くらいは一緒にご飯でもしたいって」
「そうだったけ」
いや、言われたのは覚えていた。でもなんとなくその話題を頭から消去したい気分で、曖昧なまま放置していた。
藤堂がご飯を食べにくるのは、百歩譲ってそれはいい。でもここに来るのはちょっと不安が残る。我慢をする自信があまりないのだ。家に藤堂がいたら、多分触れたくて仕方なくなる気がする。でもこの狭い家の中で、二人が母の目につかない場所にいるということは困難だ。
「さっちゃんが言ってくれないなら、直接お母さんメールしちゃうわよ」
「えっ、あ、言うよ。今度、聞いてみるから」
母がメールなんてしたら、藤堂のことだからすぐに来てしまうに違いない。それは困るんだ。もうちょっと藤堂不足を補ってからじゃないと、おあずけ食らいっぱなしでベタベタしたいこの欲求不満状態では本当にまずい。絶対に顔にも気持ちが出るだろう自信がある。そこをどう母を目の前にして言い訳できると言うんだ。
「……あ」
「どうしたの?」
「なんでもない」
我ながら妙案を思いついた。
ただしその思いつきがそう簡単にうまくいくとは思えないが。でもできたなら色々と片をつけるにはいいかもしれないと思う。それはかなり強引な思いつきだとは思うけれど、思いついたからには早く実行に移すための準備をしたい。疑いの眼差しをこちらへ向ける母を半ば無視しながら、早々に食事を済ませ風呂に入り、寝る準備までを完了させると、僕はさっさと部屋に引きこもった。
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