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第495話 決別 5-4

 相変わらず僕は藤堂が時折見せる不安そうな、頼りなげな反応に弱かった。もはや簡単に想像できてしまうその表情を思い浮かべて、思わずベッドに頭から突っ伏した。 「佐樹さん?」 「本当だってっ」  どうしようもなく、くすぐったい。多分きっと藤堂は無意識なのかもしれないが、こちらの機嫌を取ろうとする甘えを含んだ声がいつもより柔らかい低音で、たまらなく恥ずかしくなる。 「そう、それならよかった」 「うん」  先ほどまでのからかうものとは違う、少し安心したような笑い声が心地よくて、浮ついた気持ちが和む。その有り余るほどの幸福感に浸りそうになる自分を誤魔化すよう、伸ばした手に触れた枕を掴み引き寄せる。そしてそれを思いきりよく抱きしめた。けれどいくら気を張ろうとしても、顔が緩んで仕方がない。  やはり人というものは無理やりに引き離されそうになればなるほど、前にも増して気持ちが強くなるものなんだろうか。騒動の前よりもずっと、藤堂に対する想いがはっきりとした気がする。それはもう自分でもわかるくらい、いままで以上に重症な気がしてどうしようもない気分になる。 「佐樹さん? 聞こえてる?」 「え? あ、悪い」  ぼんやりと声に聞き惚れてたら、すっかり思考がどっかに飛んでいっていた。 「眠い?」 「いや、そういうわけじゃない」  心配げな藤堂の声に、余計恥ずかしさが増す。 「明日も早いからそろそろ寝ますか?」 「あ、いや……ん、そうだな」  これといってお互いに話題があるわけではないが、なんだかんだと時間は過ぎ、かれこれ一時間も話をしている。

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