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第497話 決別 5-6
「……わかりました。だったら来週空いてますか?」
「は?」
「都合悪いですか?」
「あ、いや、ううん。こっちは大丈夫だけど」
少し思案している様子だったので、また今度ゆっくり考えてくれとそう言おうと思っていたのに。まさかこんなに早く即決されるとは思わなかった。正直どうしたらいいのか一瞬わからなくなり、思いきり声が上擦ってしまった。
「じゃあ、来週の土日空けますね」
僕の想像はどれも覆されて、呆気に取られているうちに全部決まってしまった。迷いのないこの即決具合はなんなんだろうか。
「あ、実は、行く場所なんだけどな」
「それは当日で構いません」
「え、でも、その」
こちらの勝手な用事に付き合わせて、せっかくの休みを空けてくれるというのに、なにも言わないままでは居心地が悪い。でもきっぱりと言い切った藤堂の言葉につい口をつぐんでしまう。なにかこちらの思惑に気づいているんだろうか。
藤堂はいつも僕が口にする前に、大抵のことはお見通しなことが多い。どうしてそこまで聡いんだろうかと、驚かずにはいられないくらいだ。それともただ単に僕の行動があまりにも読みやすいから、ということなのだろうか。でも今回のことはまさか気持ちを先回りされることなんてないと思っていた。
「藤堂、底知れないなぁ」
思わず通話が切れた電話をまじまじと見つめてしまった。でも本当に言わないままでいいのだろうか。まさか本当に気づいていたりするとか?
「……来週か、元々予定してたけど、二人分だし。新幹線と泊まる場所、早く決めないとまずいよな」
とりあえず僕がいま悩んでも、答えが見えてこないことはよくわかった。仕方ないので現実問題の解決を図ろうと思う。
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