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第498話 決別 6-1
思いつきで色々と決めてしまったが、少しの迷いはあったりする。ただ傍にいたいという気持ちが強くて、もちろんそれだけではないけれど。考えてみたらかなり自分勝手なことに付き合わせるんじゃないかと不安にもなった。
しかしあれから何度となくことの真相を伝えようと試みるものの、やんわりとそれを藤堂に断られてしまうのだ。なぜ藤堂がそこまでして拒むのかがわからない。
「どこまで僕の考えを読み取ってるんだ」
たまに藤堂は超能力者なんじゃないかと、本気で疑いたくなる。そして相変わらず綺麗に笑うその裏側がよく見えなかったりもする。それは嘘をついてるとかそういうのじゃなくて、本心を隠す傾向があるのだ。
それは藤堂に身についた残念な癖の一つ。早くそんな癖は治してやりたいと思うけれど、なかなかどうして元々の性格も相まってか、それは一筋縄ではいかないのが現実。
「はぁ」
思わず深いため息を吐き出してしまった。まだまだ難しいことはたくさんある。
「駄目だ駄目だ、ため息ついてる場合じゃない。とりあえず色んなことは横に置いて、せっかく出かけるんだから、気持ちを明るく行こう」
そうだ、出かける理由はなんであれ、せっかく藤堂と一緒にいられるんだ。もっと前向きに行かないと、そもそもこの思いつきは久しぶりに二人で一緒に過ごすという計画だ。
「よし、うん。楽しいことを」
「佐樹さん?」
「えっ? あ、わ、藤堂」
急に声をかけられ、いつの間にか目の前に立っていたその存在に気がついた僕は、腰かけていたベンチから慌てて立ち上がった。
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