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第501話 決別 6-4

「佐樹さん、聞こえてますか」 「……」  それにしてもいつから僕はこんなに女の子みたいな嫉妬するようになったんだろう。それと藤堂が格好いいのは嬉しいけど、一緒にいて周りに意外そうな顔をされるのは腹が立つ。そりゃぁ、僕はどう見ても十人並みかもしれないけど――。 「あんまり可愛い顔ばかりしていると、悪戯しますよ」 「えっ、あ、ストップっ」  遠くで聞こえていた藤堂の声が急に耳元で聞こえて、再び我に返った。そして目の前まで迫っていた藤堂の顔に驚いて、思わず腰が抜けてしまった。 「わっ」  とっさに藤堂を突き飛ばし、その反動でよろけた足がもつれ、終いに僕は背後のベンチに座り込んでしまう。 「危ないな」 「わ、悪い」  あまりに一瞬の出来事で目を白黒させている僕に、今日何度目かの藤堂のため息が降り注いだ。 「佐樹さんは考えごとすると、すぐどっかに意識飛びますよね。俺もよくあるから人のことはあまり言えないけど、佐樹さんのは無防備過ぎてハラハラする」 「ああ、悪い。ちょっと、今日はお前といるから浮かれ過ぎてるかも」  思えば顔を合わせることはあっても、こうして二人っきりでいるのは本当に久しぶりな気がする。自分が思っている以上に、今日という日に浮かれているのかもしれない。 「また、そういうこと言って、そんなに俺を喜ばせてどうするんですか」 「え?」  頭を抑えてうなだれる藤堂に首を傾げたら、ますます困惑した表情を浮かべられた。

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