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第504話 決別 7-2

 いつもだったら慌ててその手を払ってしまいそうになるのに、なぜかいまは身動きもせずにじっと固まってしまう。 「……なんでそんなに可愛いかな」 「え?」  ため息交じりの言葉に首を傾げたら、少し困ったように笑う藤堂に髪を梳くように撫でられた。 「なんだか二日間も保てる自信がなくなってきました」 「なにを?」 「ん、色々と」  言葉を濁して曖昧に笑った藤堂。その心の内を探るようにじっとその目を見つめていたら、急に視界が遮られた。そしてその理由に気づくのに数秒要した。 「あ、え、……っ!」 「シーっ、大きな声出さない」  思わず声を上げそうになって、藤堂に口元を手で押さえられる。それでも動揺は治まらなくて、それどころかますます頭の中がぐるぐるとした。微かに残る唇の感触に脳みそが沸騰しそうな勢いだ。 「いま、いま、……した」 「あまりにも可愛かったので、つい」 「つい、じゃないっ」  思っている以上に周りはこちらのことなど気にはしていないとわかっていても、公衆の場でいきなりあんなことされて驚くなというほうが無理だ。 「……心臓に、悪い」 「すみません」  謝る藤堂の声よりも自分の心臓の音がうるさくて、ますます顔が熱くなってしまう。なんだか自分の気持ちに振り回されている気がして、恥ずかしくて仕方ない。もうこの乙女的な反応をどうにかしたい。いまなら羞恥で死ねる気がする。でももっと怒っていいはずなのに、それができない。

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