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第505話 決別 7-3

 自分でもこの状況がおかしいことぐらいわかっているのに。  思わず小さく唸って俯くと、藤堂は心配げな顔をしてこちらを覗き込もうとしてくる。その視線から逃れるように顔を背ければ、藤堂が後悔をして落ち込みだしたのが気配でわかる。そうすると僕が弱いのをわかってやっているんじゃないかと、そう疑いたくなるが、藤堂は案外そういうところでは嘘がつけないと言うか、やたらと素直だ。というよりも僕に対して従順な部分がある。それはそれでかなり優越なのだけれど、やはりこれには弱い。僕もさすがにこのままではいられない。 「別に、怒ってない」  握られていた手を握り返して、こちらをじっと見ている藤堂の目を見つめ返した。案の定不安そうな顔をしていて、でもそれが可愛くて仕方がない。先ほどまでのやりとりと逆転して少しおかしな気分だ。  でもこんな風にすぐ不安になるところも、昔から持っている心の傷なんだろうかと思うと、切ない気持ちになる。少しずつでいいから、それが癒やされてくれればいいと願うばかりだ。 「嫌じゃないぞ。ただ場所をわきまえてくれ。恥ずかしくていたたまれない」 「気をつけます」 「うん」  相変わらず藤堂は変化球のない直球だ。でもそれが自分にだけ向けられていると思えば、嫌なわけがない。普段は隙がないくらいクールなのに、僕の前では拗ねたり落ち込んだり、泣きそうな顔をしたり、至極嬉しそうな満面の笑みを向けてくれたりする。

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