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第506話 決別 7-4
こんなに僕ばかり幸せな気分に浸ってていいのだろうか。
「藤堂」
「なんですか?」
「幸せ過ぎるんだけど」
「……え?」
思わず心の声がダダ漏れてしまった。
そしてそんな僕の言葉に固まったように動かなくなった藤堂の顔は、みるみるうちに赤く染まっていく。終いには忙しなく視線が右往左往と空を泳ぐ。その表情に気をよくした僕は、へらりと口元を緩めてにやけてしまった。
「佐樹さん、俺のほうがいたたまれない気分なんですけど」
片手で口元を覆って顔を背けた藤堂の顔を覗いたら、近づけた顔を空いたもう片方の手で押し返された。なのでその手のひらに口づけたら、弾かれたようにその手は離れて、藤堂はますますうな垂れたように肩を落とした。
「俺のほうが心臓が持ちません。佐樹さんのは無自覚過ぎるんですよ」
「自覚はあるぞ」
「いや、ないです。とりあえず悪ふざけはなしでお願いします。本気でどうにかしたくなる」
「どうにかって?」
両手で頭を抱えてすっかり俯いてしまった藤堂に首を傾げると、盛大なため息を吐き出されてしまった。怒っている様子はないが、なんだかひどく呆れられているようだ。
「またそうやって言葉を濁す」
「場所をわきまえて、あとで教えてあげますよ」
ふて腐れた僕に、藤堂はいまだ困惑したような表情で苦笑いを浮かべた。どうやら僕は相変わらず相当鈍いようだ。
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