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第509話 決別 8-1

 嫌ではないと言ってくれた藤堂の気持ちに嘘はないと思う。僕を見る目はまっすぐで淀みもない。けれど僕はいつでも藤堂の優しさに甘えているのかもしれないと、改めて実感してしまった。 「藤堂の気持ちは信じてるけど、本当に嫌なことは嫌って言えよ。じゃなきゃ、僕は馬鹿だから気づかない」 「……わかりました」  なぜか嬉しそうに微笑む藤堂を不思議に思いながら見ていると、新幹線は目的の駅へ到着をした。一年ぶりのこの地に少し緊張している自分がいる。それは多分、藤堂と一緒にいるせいかもしれない。  これで本当にすべてが終わる。これからはただ藤堂の隣を歩いていくことだけを考えていられる。でもその嬉しさと共にほんの少しの寂しさもあった。こんなことは藤堂に言えないけれど、嫌いで離れたわけでも別れたわけでもない。それどころか、なにもかもが中途半端で解決もなくて、空っぽになってしまったのだから、情がないと言えば嘘だ。 「藤堂、好きだ」  駅のホームに降り立ち、先を歩く藤堂の背中に小さく呟いた。でもそんな小さな呟きにも藤堂は振り向いて笑ってくれる。差し出された手を取ったら、あまりにも温かくて泣きそうになった。  そんな俯いた僕の手を、藤堂は強く引き寄せてその胸に僕を抱き寄せる。驚いて身を引こうとした僕の肩をしっかりと抱いたその手は、振りほどくには力強過ぎて、さらに涙腺が緩んでしまいそうだ。

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