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第510話 決別 8-2
「佐樹さんごめん。俺が我がまま言いましたね。忘れられなくて当然なんですよ。そうでなければ永遠なんて誓わないでしょう? 俺のは子供じみた嫉妬です。だから、お願いだから傷つかないで」
息が止まりそうなくらい強く抱きしめられているのに、それが嬉しくて胸が温かくて、心が詰まってしまうくらいの想いが溢れる。ああ、やはり藤堂には全部見透かされているんだと、そう思ったらモヤモヤと心の中でくすぶっていたものが晴れていくような気がした。
「藤堂、恥ずかしい」
「ああ、すみません」
ホームを過ぎる人たちはあからさまに振り返る人と、あえて知らぬふりをする人と、気にも留めない人と、皆様々だが、さすがにこのままでは気恥ずかしい。でも藤堂はなかなか手を離してくれず、それどころか擦り寄るように髪に頬を寄せられた。
「全然すみませんとか思ってないだろ」
「あはは」
「笑って誤魔化すなっ」
悪戯じみた笑みを浮かべる藤堂の頬を引っ張ったら、渋々といった様子で手を離してくれた。
「お前はたまにオープン過ぎるから、どうしていいか、わからなくなるだろ」
「どうせここでは誰も気にしません。家路に就く頃には俺たちのことなんて覚えてないですよ」
「そんなのわかんないだろっ、もう、今日のお前、変」
電車の中では大人しくしていろとか言うし、新幹線の中ではいきなりキスはするし、いまもこうして人が行き交う中で躊躇いもなく僕を抱きしめる。
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