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第519話 決別 10-2
「それもあとで、でいいですか」
「あとでっていつ?」
あとであとでとなにもかも後回しで、一体いつになったら白状してくれるのだろう。不満をあらわにして眉をひそめると、困ったように小さなため息をつかれてしまった。
「……宿に戻ってからでお願いします」
「じゃあ、早く帰ろう」
「いや、お墓参りに来たのにそんな投げやりでいいんですか?」
そそくさと、ろうそくと線香に火をつけてお墓参りを済まそうとする僕に、藤堂が少し焦ったようにこちらを見つめる。
「投げやりじゃない。ちゃんとさっき色々話をしたからいいんだ」
掃除をした時、花を生けた時、お供えを供えた時、心の中でたくさん話をした。
一緒にいた頃は本当に幸せだと思っていたこと、悩んでいる時になにも気づいてあげられなかったのが悔やまれること、いなくなって本当に寂しくて仕方なかったこと、自分を責めて悲しんでばかりいたこと、数え切れないことを話した。でもそれもすべて今日で終わりにするんだと最後に伝えた。
「これからはお前と幸せになるからって、そう言ったからいいんだ」
「佐樹さん」
最後に二人でお墓に手を合わせてから、じっと僕を見ていた藤堂に笑いかけてゆっくりと立ち上がった。僕を見る藤堂は少し戸惑ったような、喜んでいるような、なんとも複雑な表情をしているが、嫌な想いをしていないのならそれでいい。
「もう、いいんだよ。これで終わりにするんだ」
元々、こうするつもりだったんだ。終わりにする、悔いも悲しみも過去にして、現在と未来だけを見据えていこうとそう思っていたんだ。
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