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第520話 決別 10-3

 この先、藤堂と当たり前に一緒にいられるようになって、平凡でなにもなくても幸せだと思える毎日を送れるようになった時。もしかしたらまたいつかここに来ることがあるかもしれない。でももちろんその時には、いままでみたいな気持ちではもうないはずだ。 「そろそろ帰ろうか」 「はい」  少し気温が下がり日も暮れ始めてきた。  来た道を二人並んで戻り石畳を歩く。でもなぜか、来た時とはなんとなく景色の色が違うように感じるのはなぜだろう。 「そういえば、佐樹さん」 「ん?」  振り返り見上げた僕に、藤堂はなぜかふっと笑みを浮かべる。その意味がわからず首を傾げたら、さりげなく手を繋がれた。 「俺と初めて会った日がいつか覚えてますか?」 「え? 初めて会った日?」  突然の質問に目を瞬かせていると、藤堂はこちらを窺うように首を傾け微笑んだ。  藤堂と初めて会ったのはいまから五年前で、確か命日から近かったはずだ。あの頃は精神的にも色々参っていた頃だから、記憶が曖昧なところがある。でもあの時、藤堂に日付を言われたような気もする。 「えっと、命日からそんなに経ってないよな。い、いつだったっけ?」  あれこれ思い返そうと考えてみるものの、残念なくらい思い出せない。 「命日は六月十日ですよね? その四日後です」 「あ、そうだっ」  あの日、藤堂は四日前に病院で僕を見かけたんだと言っていた。でもなんで急にそんなことを聞くのだろうか。

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