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第541話 決別 16-2

「ねぇ、佐樹さん。もう本気で、色んな意味で俺の理性がヤバイから」 「今更そんなこと言うのはこの口か」  ぐっと襟元を掴む手に力を込めて俺を引き寄せると、彼は再び俺に口づけてくる。それは先ほどのと同じように深いもので、本当にいまここで意識を手放したい気分になった。 「あんなエロイ顔して人のこと触ったくせに、今更そういうこと言うかお前」 「あれは、謝ります」 「謝るな!」  いきなりパッと手を離されて俺は再びベッドの上で仰向けになる。そんな俺を見下ろす彼の顔は紅潮していて、それを隠すように片腕で顔を覆っていた。しかし耳や首筋まで赤くなっているのでちっとも隠れてはいない。  あんなキスを仕掛けておいてこういうウブな反応をされると、そのギャップにこう、ムラムラとくるのはやはり男の性だと、思いたくないが実感してしまう。 「あれから色々考えたんだぞ。逃げたのも後悔したし、お前が傷ついてないかって心配にもなったし。でも、どんな顔して会えばいいかわかんなくて」 「なるほど、やっぱり素面じゃ会えないから飲んじゃったんですね」 「……」  小さく頷いた彼の手を握りその指先に口づけると、ぴくりと肩が跳ね上がった。酔っていていつもよりも触覚が敏感なのかもしれない。そんな反応につい悪戯心が刺激され、指先を口に含むように舐めてしまった。すると一瞬にして顔がいままで以上に赤く染まり、握っていた手を振り解かれてしまう。

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