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第544話 決別 17-1

 藤堂に触れられると幸せだしドキドキもする。でもそれと同じように藤堂もそう思っているなんてことは、実際のところあまりよく考えていなかった。それにそういう意味で僕に触れたいと考えているなんてことは、なに気なく傍にい過ぎて、それだけで満たされてしまって、何度言われても僕はうっかり忘れてしまう。  大体いつもなに食わぬ顔をして笑っているから、その笑みに誤魔化されてしまうのだ。僕とは違って滅多に慌てたり、取り乱したりしてなにかをしでかすなんて、ほとんどすることもないし。だから僕は変に安心して近づき過ぎたんだ。  まさか藤堂が困っている理由がこんなことだなんて思いもよらなかった。元々色恋に僕が疎いから余計に負担をかけていたのかもしれない。でも藤堂が望むことは叶えてあげたいとは思う。けれどそうは思ってもあんな目で見つめられて、触れられたら恥ずかし過ぎて本当に羞恥で死にそうな気分になる。  普段の藤堂はキスする時に髪や顔によく触れたり、撫でたりすることはあるが、それ以上のことはそんな素振りも見せないから、余計に免疫がなくて戸惑ってしまうのだ。 「なぁ、藤堂」  だからどうしたら藤堂が望んでることを叶えられるか、ない知恵を絞り考えた末。つい飲めないお酒に逃げてしまった。そうしたらお酒の勢いを借りてなんとかなるような気がして。でも予定外に飲み過ぎて、頭がくらくらして前後不覚になってしまうという体たらく。  だがいまなら触れられても、逃げずにいられるような気がした。酔いのせいで恥ずかしさとか、そういったものが麻痺している。 「藤堂、触って?」

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