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第549話 決別 18-2
「あー、まあちょっと、ですけど」
「マジかっ」
ほんの少し考える素振りを見せた藤堂に一瞬だけめまいを感じた。ちょっとでもしているということは、しているということとなんら変わらない。酔っ払って迫るとかやはり本気でどうかしてると思う。しかもその出来事をなにも覚えてないとか、最低過ぎて情けなくて泣けてくる。
あれが現実だとしたら最低最悪だ。そんなに欲求不満なのか自分。けれど頭を抱えてベッドに突っ伏した僕の頭を、藤堂はあやすみたいに優しく撫でてくれる。しかし自分のしでかしたことに後悔ばかりが押し寄せて、そんな優しさにさえも胸が痛くなった。
「酔っ払った挙げ句に迷惑かけるとか最低」
いつもと変わらぬ笑みを浮かべてくれる藤堂に申し訳なさが募り泣けてくる。
「まあ困りはしましたけど、別に嫌ではなかったですよ。酔っていない時でしたら、誘われるのはいつでも大歓迎ですけどね」
本気とも冗談ともつかない藤堂の言葉に、笑うに笑えない。飲んで気まずさをどうにかしようと思わなければよかった。素直に部屋に帰って謝れば、こんなことをしでかさなくて済んだのに、昨日の自分が恨めしい。
「なにも、なかった、よな?」
欲求不満なんだとしても、やはりあれは夢であって欲しい。藤堂を押し倒した挙げ句に無理矢理迫るとか、現実であって欲しくない。ちょっとと言っていたから夢である可能性は高いが、実際のところはわからない。
ちらりと窺うように藤堂の目を見上げたら、にこりと綺麗に微笑まれた。この微笑みはどっちが正解なんだかわかりづらい。なんだか変な冷や汗が出てくる。おどおどしながら答えを待っていると、くしゃりと髪をかき乱すように両手で頭を撫でられた。
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